こんにちは、健康マスター・普及認定講師のうりさくらです!

みなさんは「フレイル」という言葉を聞いたことがありますか?

語源はFrailty(虚弱)で、加齢に伴い心身の活力が低下した状態を指します。

年を取れば活力低下は仕方のないことと諦めて何もしないでいると、どんどん身体機能は低下してしまいます。

最近の研究で、フレイルを早期発見・早期対策すれば身体機能の低下を抑えたり改善できることがわかってきたのです。

そこでこの記事ではフレイルについての概念や予防法をわかりやすく解説します。

この記事はこのような人におすすめです!

  • できるだけ要介護にならないようにしたい
  • フレイルが何か知らない
  • フレイルのチェック・予防法について知りたい

この記事を読めば、健康寿命を延ばすために「どのようなことに注意し、何を実践すればよいか」の具体的なアプローチがわかります。

あなたの未来を健やかに変えるその第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

フレイルとは?|健康寿命に黄色信号がともるとき!?

フレイルとは、加齢に伴い心身が衰えた状態を指します。

脳卒中や事故の場合は別として、健康寿命はある日突然に終わるわけではありません。

高齢期の多くの方は、健康な状態からフレイルを経て要介護状態に移行することがわかっています。

年齢とともに起こる身体機能の低下

加齢に伴い、心身の機能が少しずつ低下していくことは避けられません。

筋力や体力が低下すると疲れやすくなり、食欲や活動量が減ることで、さらに身体機能が衰えていくという悪循環に陥ると考えられます。(※1)

特に、感染症や転倒などの大きなストレスが加わると、回復力が追いつかず、元の状態へ戻ることが困難になってしまうのです。

その結果、徐々に健康が損なわれ、要支援・要介護状態になる危険性が一気に高まります。

 出典:国立長寿医療研究センター・東浦町作成「健康長寿教室テキスト第2版」 2020. p.1より引用(※1)

フレイルとは、図のように健康な状態から要介護状態へと移行する途中の段階であり、まさに健康寿命が終わりに近づいている状態といえます。

しかし、近年の研究では、このフレイル期に適切な対策を取ることで身体機能の維持や改善が期待できることもわかっており、元の健康な状態へと戻る可能性も十分に残されているのです。

連動する3つの衰え|からだ・こころ・社会性

健康が「肉体的・精神的・社会的に良好な状態」であるとすれば、フレイルは肉体的・精神的・社会的に虚弱な状態と言えます。

フレイルの症状は多岐にわたりますが、大きく分けて3つの側面として捉えることができます。

フレイルの3つの側面(※2)

※サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量と筋力が低下した状態を指します。

筋力が衰えると移動能力の低下やバランス障害を引き起こし、転倒のリスクが高まってしまいます。

また、嚙む力が弱まることで食事内容が偏り、栄養不足(低栄養)に陥りさらに筋力が低下するという悪循環を招きかねません。

こうした身体機能の低下によって外出や人と接する機会が減ると、社会的孤立や抑うつ、認知機能の低下へとも繋がっていきます。

このように、フレイルを放置すると3つの側面が連動して悪循環に陥り、要介護状態となるリスクがさらに高まると考えられています。

しかし、研究や臨床の現場では、早期に発見して適切な対策をとることでこの悪循環を断ち切り、フレイル状態から回復できることも分かっているのです。

早期発見と対策がカギ!データが語る健康寿命延伸の可能性

フレイルには、適切な対応によって元の健全な状態へ引き返せる可逆性(かぎゃくせい)という大きな特性があります。

適切な栄養摂取や運動などの対策を講じることで、健康な状態へ回復したり、進行を抑えたりすることが可能とされています。(※2)

では、実際にフレイル状態からどの程度回復する可能性があるのでしょうか。

以下は、健常・プレフレイル(フレイル予備軍)・フレイル状態の方々について、調査登録時から1.5年後の状態変化を示したデータです。

出典:国立長寿医療研究センター・東浦町作成「健康長寿教室テキスト第2版」2020. p.4より引用(※1)
原典:Xue QL, Clin Geriatr Med. 2011;27(1):1–15.

データを見ると、登録時にプレフレイルだった人の35.0%が1.5年後には健常な状態へと回復しています。

さらに、フレイルだった人でも16.7%が健常へ、58.3%がプレフレイルへと改善しています。

この結果からも、フレイルは一方向に進行するだけでなく、健康な状態へと回復する可能性があることがわかります。

だからこそ、まだ本格的なフレイルに陥る前の段階で気づき、適切な対策へとつなげることが、「健康寿命を延ばす」うえで重要なのです。

フレイルを早期に発見しよう|特徴・診断基準・チェック方法は?

フレイルを早期発見するためには、まず自分自身の体調の変化に気づくことが大切です。

フレイルの特徴・診断基準

フレイルにはおもに5つの特徴があります。(※3)

フレイルの特徴

このうち1~2項目に該当する場合はプレフレイル、3項目以上に該当する場合はフレイルと判定されます。

診断基準となる日本版フレイル基準は以下のとおりです。

出典:国立長寿医療研究センター・東浦町作成「健康長寿教室テキスト第2版」 2020. p.2より引用(※1)
原典:Satake S, Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020;20(10):992–993.

握力や歩行速度は数値を聞いてもどの程度かわからないですよね。自分でできるチェック方法もみてみましょう。

自分でできる2つのフレイルチェック

誰でも簡単にできるものとして、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授らの研究チームが考案した方法が2つあります。

フレイルのセルフチェック

本来はサルコペニア(筋肉量と筋力が低下した状態)の危険度をみるものですが、フレイルの簡易型チェックとしても有効です。

両手の親指と人差し指で輪っかを作り、利き足でない足のふくらはぎの最も太い部分を軽く囲んでみましょう。

出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢監修 「フレイル予防ハンドブック」を参考に作成

「指輪っかテスト」で隙間ができる場合は、サルコペニア(筋肉量と筋力が低下した状態)の危険度が高くフレイルの可能性も高いと言えます。(※4)

フレイルの兆候を調べるチェックシートです。

出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢監修 「フレイル予防ハンドブック」を参考に作成

B欄に6つ以上チェックがつくとフレイルのリスクが高いとされます。(※4)

もし自己チェックでフレイルの傾向が見られたり、不安を感じたりした場合は、まずはかかりつけ医などの医療機関へご相談することをおすすめします。

なお、75歳以上の方を対象とした後期高齢者健康診査では、「後期高齢者の質問票」にフレイルに関するチェック項目も含まれています。ご自身の状態を知るためにも、積極的に受診しましょう。

自己チェックや健診によって自分の状態を把握し、早期発見・早期対策につなげることはとても大切です。

そしてそれと同じくらい重要なのが、日頃からフレイルにならないための「予防対策」を習慣化しておくことです。

ここからは、健康な毎日を長く保つための予防対策について詳しく見ていきましょう。

フレイルの予防3本柱「栄養」「身体活動」「社会参加」

フレイルの予防には「栄養」「身体活動」「社会参加」という3つの要素が互いに深く影響し合っていることが、厚生労働省をはじめとするさまざまな研究で示されています。(※2)

どれか一つだけではなく、これら3つをバランスよく日常生活に取り入れていくことが、フレイル予防の大きな柱となります。

栄養|高齢者こそタンパク質をしっかり!

フレイル予防において、特に重要となるのが筋肉量の維持と筋力の低下を防ぐことです。

そのためには、3食バランスの良い食事をとることはもちろんですが、なかでもタンパク質を意識して十分に摂取することが欠かせません。

高齢者は、体内で筋肉のタンパク質を合成する働きが低下しやすいため、タンパク質を十分に摂取することが重要です。(※3)

具体的には、フレイル予防のために高齢者でも1日当たり体重1kgにつき1.0~1.2gのタンパク質摂取が推奨されています。(※5)(例えば体重50kgの方であれば、1日50~60gが目安です)

噛む力が弱くなると、固いものが避けられがちになり、食事全体のバランスが偏って低栄養を引き起こしやすくなります。
口腔ケアにも気を配り、しっかり噛んで食べる環境を整えることも、大切な栄養ケアの一部です。

身体活動|まずは「今より10分」多く動こう!

体を動かすことは、運動そのものの効果だけでなく、筋肉のタンパク質合成を促すためにも非常に有効です。(※3)

「もう歳だから筋肉は増えない・・・」と思われがちですが、筋肉は何歳になっても鍛えればしっかりと応えてくれます。

厚生労働省の『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』では、高齢者に対して1日40分以上(約6,000歩以上)の身体活動が推奨されています。

もし「急に6,000歩は難しい」と感じる場合でも、諦める必要はありません。ガイドラインでも、まずは「今より10分多く体を動かすこと(+10分)」から始めるようアドバイスしています。(※6)

運動の中でも、特に筋肉のタンパク質合成を強力に促してくれるのがレジスタンス運動です。

これは、スクワットやつま先立ち、片足立ちなど、自分の体重や抵抗を利用して特定の筋肉に負荷をかけるトレーニングを指します。

無理のない範囲で、日々の生活に少しずつ取り入れていきましょう。
(※具体的な運動方法は、国立長寿医療研究センターの「健康長寿教室テキスト第2版」などでも分かりやすく紹介されています)

タンパク質が足りない状態で運動すると、筋肉は合成されるよりも分解されやすくなります。「運動」と「栄養」をセットで行うことが、筋肉を健やかに維持・増強するための確実なアプローチです。(※3)

ご自分のできる範囲でいいので、少しずつ運動を増やしましょう!

社会参加|まずは「一歩外に出る」ことから始めよう!

フレイル予防において、実は見落とされがちで、かつ非常に重要なのが「社会参加」です。

フレイルは、社会とのつながりが薄れる「社会的フレイル」をきっかけに、身体面や精神面へと悪影響が広がり、まさにドミノ倒し(フレイル・ドミノ)のように進行してしまうことが分かっています。(※2)

外出や人と接する機会が減ると、日常生活の行動範囲が狭まり、孤立しやすくなります。

その結果、身体を動かさなくなって筋力が低下したり、気分が塞ぎ込んで抑うつや認知機能の低下を招いたりという悪循環に陥ってしまうのです。

まずは大げさに考えず、社会とのパイプをつなぎとめておくことを意識してみましょう。

社会参加といっても、決して特別なことではありません。日常のさまざまな場面が、立派に社会参加のきっかけになります。

社会参加の具体例(※7)

もちろん、ここまで大きな活動でなくても問題ありません。「友人・知人とランチに出かける」「近所のお店で会話を交わす」といった日常の関わりも、大切な社会参加の一つです。

何か一つでも外出の予定ができると、それに向けて体調管理や身だしなみ(歯の衛生状態も含む)といった前向きな意識が働き、心も身体も自然と活動的になっていきます。

無理のない範囲で、ご自身が「心地よい」と感じられるつながりやきっかけを探してみましょう!

まとめ|フレイルは人生終盤の分岐点

フレイルとは、加齢により心身の機能が低下した状態のことです。

高齢期の多くの方は、健康な状態からフレイルを経て要介護状態へと移行することがわかっています。

フレイルには、筋力低下などの身体的な面、認知機能の低下・うつなどの精神・心理的な面、閉じこもりなどの社会的な面など、3つの側面があり、放置しているとドミノ倒しのように連動し、悪循環に陥ってしまいます。

しかし、フレイルは可逆性(元の状態に戻る特性)があり、早期発見・早期対策をすれば健康な状態に戻れたり、機能低下を抑えたりすることができるのです。

フレイルを知っていて対策を取るのと取らないのとでは、未来は大きく変わってきます。

まさに、健康な状態と要介護状態の運命の分かれ道と言えるかもしれません。

フレイル予防の基本は、栄養・運動・社会参加の3本柱です。これらを日常生活に取り入れることは、健康寿命を延ばすうえでも重要です。

まずは、「しっかり噛んで食べる」「しっかり体を動かす」「人との関わりを持つ」など小さな一歩でかまいません。

少しでも長く自分らしい人生を楽しむために、未来を変えるフレイル予防を始めてみませんか?